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木本硝子のブランディング KIMOTO GLASS TOKYOをつくる話(1)

2013年ごろから2020年までの7年間、クリエイティブディレクターとして関わらせていただいた思い出の仕事です。台東区のご近所さんであることでご縁をいただき、結果としてがっつりの関わることになったんですが、すべては木本社長との信頼関係があればこそのお仕事でした。
当初、会社全体のブランディング考えるうえで、グラスというものの価値をあらためて考えるところからのスタートでした。100円ショップで売られているグラスと、木本硝子のグラスで売られている数千円のものや何万円もするグラスと何が違うのか。幾度となく議論し、行き着いた結論が嗜好品という位置づけでした。つまり、日常的にかかせない水分補給のための器ではなく、お酒やお茶、コーヒーなどの生命維持のために存在しているわけではないもの、つまり「嗜好品としての飲料を飲むためだけの器」ということにフォーカスしようと。とくに、お酒を飲むときは大なり小なり特別なことであり、器というものが特別でなければいけない。そんなことを根幹に、ブランドとしてのコンセプトを設定し、アウトプットを始めていきました。

私が、ブランディングを進めていく時に最も重視しているのが「これまでやってこられたことを否定しない」ということです。しかし、よくありがちなのはコンセプトを設定することで、これまでやってきたことをゼロにして新たに構築していくこと。つまり、そのコンセプト通りの商品開発や訴求の仕方、さらにはビジネスモデルまでも変えていくというような進め方ってよく耳にします。そんな事例もクリエイティブ系の書籍でも紹介されていることが多く、もしかしたらブランディングの定石なのかもしれません。ただ、こういったことは、テレビCMで見かけるような誰もが知っている企業やブランドならできることで、そんな大胆な変化を起こせるのは並大抵ではできないことなんです。それらを進めると、これまでやってきたことを必ず否定していかないといけなくなる。多くのお仕事は、そんなブランドの描き方は難しいわけです。
木本硝子さんのブランディングはまさに、それでした。ブランディングを始めるために木本社長からこれまでやってきたことをたくさん聞かせていただきました。まさに、否定したくない木本硝子さんの道のりがたくさんある。今まであったことを活かしながら、どう伝えるかってことに重心をおくことを考えました。そこで生まれたのが「木本硝子のこれまでと、これから」です。

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